わかれあげまん
オフィシャルデート






* * *



それから数日が経過した。


分厚い雲が空を覆った薄暗い午後。


柚は自分の所属する油画科制作室の、自分のイーゼルの前に座っていた。


ぼんやりと考え込みながら、一抱えある大きなキャンバスの上に、筆で色を置いていく。


心ここにあらずといった状態で、筆の運びはまるでおぼつかなかった。


先程呼び出されたカフェで美也子から聞いた話が頭をぐるぐる回っていて、ちっとも制作に集中できない。



美也子からの報告はにわかには信じがたい内容だった。




美也子の勘はそう鈍い方ではないことは知ってるけど、だとしても。


あのルチアちゃんが、二股を掛けてるだなんて。


あんなに愛しそうに、大事そうに藤宮くんを抱きしめてたのに。…


何かの間違いじゃないのかな?



尖らせた唇から、ふぅーと長めの溜息をつくと。


ついに手にしていた筆をパレットの脇に置いた。



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