わかれあげまん
「居た!…こら柚!」
やにわに背後から飛んだ低い声に、大袈裟じゃなく身体が跳び上がった。
そして背後を振り返った時、ハンターに見つかった獲物状態に、心拍までもが跳ね上がる。
むすっと目を座らせた渡良瀬が大股にこちらに歩み寄り、あっという間に目前に立たれてしまった。
「なあ。なんで電話くれなかったんだよ。ずっと探してたのよ?俺。」
「さ、…探される意味が分かりません。」
とても合わせられない視線を泳がせながら乾いた声で柚が言うと、渡良瀬は。
「なーんで?」
なにゴネてんの?的に眉根を上げ。
「そーやって拗ねて。カワイイなぁ柚は。」
笑み崩れ腕を伸ばして引き寄せて来た。
「や、やだ!離して!」
激しい嫌悪感に顔を顰め、藻掻いた。
どうにか振りほどき、背後に飛び退った小さな身体を渡良瀬の長い腕はまた容赦なく絡め取りに来て。
「ほらほら。んな泣きそうなソソリ顔してるとまた、襲っちゃうぞ?俺。」
冗談のつもりなのかは分からないがクツクツ喉を鳴らしながら、真っ赤になってわなないてる柚の顎を捉え、そこにキスしようと身を屈めてきた。