わかれあげまん





へ。

と嘲るように一笑してから渡良瀬は。


「何だそれ。正義の味方気取りかよ。…あ?」


プッと石畳へ吐き出した唾が血に染まっていた。


「あんなことされて…信用できると思ってるの?…あたしは先輩のものなんかじゃない。…も、ほっといて下さい!」


半ベソになりながらも哉汰の背後から柚ははっきりとそう告げた。


「…」


黙ってそれを聞き届けた渡良瀬がなぜかニヤリと口角を上げ、哉汰は訝しげに目を細めた。



「藤宮。…お前。今殴ったこと、絶対後悔するからな。…柚。お前もだ。今日だけは見逃しといてやる。けどな。…」


「…」


「今に絶対、自分から泣いて縋るようになる。俺の女にしてほしいってな。…じゃな」


涼しい顔で言い捨てると踵を返し、渡良瀬はまるで何もなかったかのようにデザイン棟の方へと消えて行った。





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