わかれあげまん
「何だあれ。…悪役そのもの過ぎて笑えるよな…」
クツクツと身体を揺らしながら振り向いた哉汰は息を飲む。
恐怖と怒りと屈辱とで、感情のコントロールを失った柚が声なく嗚咽していたから。
引き攣れたように見開いた丸い瞳から涙を流し、紅潮した顔が震えていた。
それを見せられた哉汰の感情にも、得もいわれないおかしなインパクトが生まれる。
反射的に柚の身体を引き寄せ、耳に囁いていた。
「…な。もう大丈夫だって。」
「・・・ん、で?」
俯き消え入りそうな声で柚が何か言った。
「ん?」
「…なん、で、…いっつも…ふじみやく…なのぉ?」
どうしようもなく惨めで愚かな自分をこっ酷くさらけだすのは。
どういうわけかいつもいつもこの人で。
またこうして哉汰によって助けられてることに、いたたまれなささえ覚える柚だった。