わかれあげまん



「何で、っていわれても。…」


声に困惑を含めながら答える哉汰は自分の胸に押し当てられた柚の顔の熱っぽさにどきりとなる。




だから。

何焦ってんだ、俺。



咳払いで邪念を払い、不機嫌に言った。


「俺、何か余計な事した?」


えっ、と焦り顔で見上げてきた柚は慌てて涙を拭い、激しく左右に首を横に振る。


「そ。…よかった。助けちゃまずかったのかと思った。」


「…そ、そんなことあるわけない、です!」


恐縮するあまりまた敬語になる柚を哉汰はクスリ笑った。


「…。もうあの人には関わらない事だな。」


そうしたいけど、あっちから追い掛けてくるんだもんなあ。


と内心は途方に暮れつつも、柚は、


「うん…ありがと。」


と礼を述べた。


涼しい微笑を返し、中庭の方向へと行こうとした哉汰を柚は呼び止めた。


「あ、あの、藤宮くん!」



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