わかれあげまん
振り向いた哉汰は、何?と首を傾げた。
ドキドキと騒ぐ心臓を抑えながら、柚はカフェでの美也子との会話を思い出していた。
『ねぇ。柚。いっそ思い切って彼に真相聞いてみれば?』
『えぇ!?』
『バイト仲間なんだったらさ、いくらでもシチュ作れるじゃん?…藤宮くんだって誰にも相談できなくて悶々としてるのかもよ?』
『そ、そう、かなぁ。』
『あんたはあんたでさ。いつまでも“運命”とやらに翻弄されてないで、たまには自分から風向き変えてみなよ』
自分から、風向きを。
・・・なんて器用な真似、美也子は本気であたしにできると思ってんのかなぁ。
と一人思い巡らし、どへっと溜息を落とす柚。
「用がないなら行っていい?」
眉をひそめ、そう尋ねてきた哉汰に、
「待って!あ、あの、ホラ!う、埋め合わせ!」
と柚は咄嗟に叫んでいた。
「…ああ。」
埋め合わせ、というワードが記憶に新しい哉汰もすぐに、口の端を持ち上げ向き直る。
「き、決めちゃおうと思って!ついでにこの場で!」
「ついでに?」
そう呟いてぷっと哉汰に吹き出されたのも構わず、柚は必死に笑みながらコクコク頷く。