わかれあげまん
「えぇーと、あ、はい!提案!こ、今度あたしと二人で何処かへ行きましょう!」
「・・・・・は?」
「…」
「………」
ビシッと右手を挙手したまま、生ぬるい笑みをたたえた柚の額につっと一筋、変な汗が流れた。
淡褐色の目を大きく見開いた後、哉汰は豪快にブハッと吹いた。
「…何だそれ。…女子中学生だってもっと上手に誘うだろ」
うっ;っと若干引き顏で彼を見て。
「え。女子中学生に誘われた事あるの?」
それを聞いた哉汰は更に腹を折り曲げて笑い出す。
「そういう事じゃなくて。…ま、いいか;」
佇まいを正すと美麗に笑った彼の表情に、柚はまたドキーンと心臓を躍らせた。
「いいですよ。何処かへ行きましょう。星崎さん」
美麗に微笑み、そう丁重に答えてきた哉汰。
「で、どこ行く?」
「あ、はい!…藤宮くんの行きたいとこ、どこでもいい!っす!」
またビシッと右手を挙げなおし満面笑みで言った柚に。
「じゃあ、…今度こそホテル行く?」
片側の口角をクッと上げ言った哉汰は当然、また柚が「冗談言わないで!」と茹蛸の様になって怒り出すのを目論んでいた。