わかれあげまん




「えぇーと、あ、はい!提案!こ、今度あたしと二人で何処かへ行きましょう!」


「・・・・・は?」


「…」


「………」


ビシッと右手を挙手したまま、生ぬるい笑みをたたえた柚の額につっと一筋、変な汗が流れた。


淡褐色の目を大きく見開いた後、哉汰は豪快にブハッと吹いた。


「…何だそれ。…女子中学生だってもっと上手に誘うだろ」


うっ;っと若干引き顏で彼を見て。


「え。女子中学生に誘われた事あるの?」


それを聞いた哉汰は更に腹を折り曲げて笑い出す。


「そういう事じゃなくて。…ま、いいか;」


佇まいを正すと美麗に笑った彼の表情に、柚はまたドキーンと心臓を躍らせた。


「いいですよ。何処かへ行きましょう。星崎さん」


美麗に微笑み、そう丁重に答えてきた哉汰。


「で、どこ行く?」


「あ、はい!…藤宮くんの行きたいとこ、どこでもいい!っす!」


またビシッと右手を挙げなおし満面笑みで言った柚に。


「じゃあ、…今度こそホテル行く?」


片側の口角をクッと上げ言った哉汰は当然、また柚が「冗談言わないで!」と茹蛸の様になって怒り出すのを目論んでいた。




< 211 / 383 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop