わかれあげまん
「どうもあんたと話してると、調子狂うな。」
哉汰はダーっと後頭部を掻いてから、困り顔のまましげしげと柚を見た。
いや、調子狂わせてるのはむしろ俺の方か…
でも、それにしたってだ。
男を警戒してる割に、肝心なとこで抜けてるんだよな。
だから渡良瀬さんみたいな男にもすぐ、足を掬われちまう。
それともこれが周りに“わかれあげまん”と言わしめたひとつの片鱗なのか?
どっちにしても危ない人だ。
こんなだから、付け入ろうとする野郎が後を絶たないんだろう。
ったく。
やれやれと眉尻を下げて溜息をついてから。
「じゃあさ。」
と、改まって柚に言った。