わかれあげまん
「俺の授業。手伝ってよ。」
「へ?授業?」
ん。と頷いて哉汰は補足説明を始める。
「明日のバイト。受験クラスの授業でさ。俺、生徒を野外スケッチに連れてかなきゃならないんだ。」
「ああ!」
と柚はポンと手を打った。
野外スケッチは毎年数回おこなっている研究所の受験クラスのカリキュラムだと、柚も知っていた。
「高戸所長も、手の空いてるスタッフをサポートで連れてっていいって言ってたし。頼むよ。」
「なるほど!うん、もちろんオッケー。」
と快諾してニコリ笑った柚だったが。
あり;
ってことは、二人で出かけるんじゃなくて、受験クラスの高校生たちも連れて行くって事で…
な;
なんだぁ。
じゃちょっと、ゆっくり話とかは無理だよね…。
宙を見たまままた何か思い巡らしているらしき柚に
「何か問題でも?」
と尋ねた哉汰に、
「あ、いえ!大丈夫!です!」
と柚は慌てて返した。
「よかった。じゃ、頼みましたよ、星崎さん。詳細はまた夜にでもメールするから。」
「はいっ!星崎柚、ぎっちり働いて、ガッツリ埋め合わせさせて頂きますっ」
哉汰は穏やかに笑うと、片手を上げ去って行った。
敬礼したままその背中を、見えなくなるまで見送ったあと、完全に緊張が解けた柚は大きく深呼吸をしてから。
…とはいえ。
これって一応デートになるのかな?
なんてことを考え、ほんのりと熱を上げた頬を両手で包んだ。