わかれあげまん
理由は分からないけど、
何か打ちひしがれてたようなあの可愛いセンパイの肩を抱き寄せ。
見下ろした瞳にたたえられた、慈しむような甘い表情。
正直、
あんな顔のカナタ、
初めて見た。…
私にだって見せたことない…
あのセンパイの出現で、カナタの気持ちに何かの変化があったんだとしたら。
もやもやとした黒い思考に耐えかねたように、ルチアは、せっかく轆轤の円台で筒状に形成したテラコッタをいきなり、ぐしゃりと潰した。
「…ちょ。」
端で見ていた専攻仲間は、息を飲んだ。
乱暴に両手を粘土に埋めたまま、台座に跨るルチアは肩で荒く息をし、顔が憤りで真っ赤だった。
「どしたの?ルチア。なんか、あった?」
離れた場所からルームメイトの一人がおずおず声を掛けると。
鋭い眼差しを真っ直ぐ前に向けたまま、ルチアは低くつぶやいた。
「ダメ。そんなのユルサナイ。…」
「え?」
私だけのものなんだから。
カナタは、
他の遊び仲間のオトコたちとは違う。
誰にも譲らない。
だって彼は、私の…
「そんな怖い顔して、…ねえ、ル…」
友人の一人が傍に寄り、肩に置いてきた手を振り払い立ち上がると、ルチアは苛立つように早足で部屋を飛び出して行った。