わかれあげまん




できれば早く一人きりにして欲しかったが、最早それをアピールできるような気力も体力も柚には残されてなかった。


囚われた宇宙人よろしく支えられ、手洗い場へ導かれ、顔を洗い口をゆすいでから、ジーパンのポケットからタオルハンカチを出して。


洗い終えた顔を拭っていたら、柚の着ていたカットソーがくんッと前に引っ張られた。


「あ」


見れば勢いよく吐いたせいでほんの少しだけ、柚の服に付着してしまった粗相を彼が洗ってくれていた。


「わっ!わっ!そんな、手、汚れちゃうからっ」


しわがれた声で慌てて言う柚に目もくれず、


「いい。どうせ洗うんだし。」


と低く返しながら、彼は流水でゴシゴシ柚の服の裾をこすり、ぎゅっと強く絞った。


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