わかれあげまん
走り出したキモチ
翌日の金曜日。
哉汰が担当する、受験クラス校外授業の日が訪れた。
柚の哉汰への“埋め合わせ”の日。だ。
この日は生徒も講師も現地集合になっていて、広大な自然公園の入園口には、大きなカルトンを抱えた数十名の受験生たちでごった返していた。
団体の入園手続きをする哉汰の背後で、
「べビッち先生~~」
と、数人の女子生徒の弾んだ声がし、彼は振り返った。
ゆったりとしたニットキャップにシャーベットホワイトのウインドブレーカー。
ショートパンツにブーツというアクティブスタイルの柚が満面笑みで彼女たちに手を振りつつ走りくるのを見ると、哉汰は再び手元の書類に視線を落とし小さく笑った。
何か生徒らよりも張り切ってないか?
ま、いいけどさ。