わかれあげまん





一同で公園に入園し、哉汰が15分ほどの手短かな導入を済ませると、生徒たちは広大な敷地内の思い思いの場所へとカルトンを抱え散って行った。


これから昼食を挟み5時間掛けて生徒らに自由にスケッチをさせたあと、全員揃って研究所へ持ち帰り、そこで合評会、というスケジュールになっていた。


もちろんその5時間の間、指導スタッフの哉汰と柚はぼんやりそのあたりで待っているわけでなく。


サッカースタジアム20個分位あるこの公園内でスケッチをする生徒たちのもとを手分けして廻り、アドバイスをしてやらねばならない。



スケッチ開始から二人で話し合い、公園を4つのエリアに分け半分ずつ廻る算段をした。


「それじゃ、東側頼みましたよ、先輩。」


哉汰はそう柚に告げ、背を向けあっさり広場の向こうへと去って行った。


あ・・・とその背中を見送りながら、柚は溜息をついた。




…だよね。


これだけ広い敷地に散らばった30人以上の生徒たちを、2人で見て回らなきゃならないんだもん…


ゆっくり話してる時間なんて…


増してルチアちゃんの事をさり気なーく聞きだすなんて高度な技、…今日はとても無理そう。


柚はその時点では殆んどそう諦めていた。





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