わかれあげまん
しかしその思わぬチャンスは、昼食タイムに突如訪れた。
正午を過ぎたら各自で一時間程度の昼休憩に入るように導入してあったため、生徒たちも各々好きな場所に集まり弁当や買って来た食べ物を広げ談笑し始めていた。
柚も午前でエリアの半数ほどの見回りを終え、バッグを肩に広場の中央にある野外のランチスペースに向かった。
するとちょうどそのスペースの片隅にある売店内に哉汰の姿を発見した。
どうやら店内で販売している食料を調達すべく、見て回っているらしい。
「!」
柚は何かひらめき、テーブルのひとつにバッグを置いてから、哉汰の元へと急ぎ走った。
店内に入り、ショーケースにずらり並んだおにぎりを選んでいる哉汰の背中をポンと叩いた。
「…ああ。あんたか。」
振り向きそうのんびり言う哉汰。
「…もう食べた?」
再び前を向きおにぎりに目をやりながらそう尋ねる哉汰に、柚は。
「ううん。今から。…ってか、藤宮くん、お昼買うつもり?」
「ああ。」
見てのとおり。と肩を竦め答えた哉汰に。
「じゃさ、あたしのお弁当食べてくれます?」
柚は声を弾ませそう請うた。
「…え?」
驚いたように哉汰は柚に目をやると、屈託なく微笑んで、はい、と手にしていた弁当の包みを捧げた。