わかれあげまん
そんな成り行きで今、柚と哉汰はランチ広場の一角に向かい合って座り、弁当を広げていた。
弁当箱を開いた哉汰は、その色とりどりのおかずの内容に驚きを隠せなかった。
「…すごいな。…超豪華。」
「ほんと?」
エヘヘ、とまた笑いながら自分も小ぶりの同じ弁当を広げる柚。
頂きます。と合わせた掌の親指に箸を挟み、哉汰は丁寧に頭を下げた。
それから迷わずその中の黄金色に照り映える卵焼きをひとつ口に放り込み、また驚いたように向かい側の柚を見て。
「…すげえうまい。…マジで。」
茫然とそう呟いた哉汰に柚は喜色満面に
「わあい!よかったぁ。」
と、戯けるようにガッツポーズをして見せた。
「ちょっと意外だな。あんたがこんなに料理できるなんて。…あ;ごめん」
思わず本音を言ってしまい慌てて詫びた哉汰を、柚は拗ねた様に唇を尖らし見てから。
「みんなそう言うんだよね。周りの友達も。…そんなに意外かな。」
「普段のどんくさいあんた知ってるだけにな。」
苦笑しながらそう言った哉汰に、柚はばつが悪そうに下を向いた。
「……」
いけね;
と哉汰も慌てて咳払いをし、それから次々におかずを口に放り込みながら。
「…お!この豚肉のチーズ巻きも最高!…こっちのやつもこう、見た目芸術的だしさ。よく朝からこんな手の混んだことできるよな。…すごいよ。マジで。」
モゴモゴ咀嚼しながら褒めそやす哉汰に、柚もクスクスと笑い出した。
哉汰も瞳を緩ませながら、一息ついて、ぽつりと言った。
「久しぶりだな。手作り弁当って。高校ン時お袋に作ってもらって以来。」