わかれあげまん
煙草の臭いに不快そうに咳き込んでいる母を振り仰ぎ、哉汰は訝しげに尋ねた。
「誰。」
それに対し母が答えた声に、哉汰は耳を疑った。
「…あんたの彼女。」
「・・・は?」
「…イタリア人の、彼女!」
語尾を強め少し自棄気味にまた母が言った。
「…」
哉汰は混乱した。
ルゥが?
ちょっと待て。
何で、…
何で、俺の実家を知ってる?
茫然自失に佇んでいる哉汰のジャケットの背中を、母は平手でばしっと叩いた。
「ホラ、ぼさっと立ってないで。とにかく父さんとこ行きなさいな!」