わかれあげまん
苛立つような母に急かされ、哉汰はリビングに入っていった。
あからさまに不快な表情のまま、哉汰は黒い革張りのソファに向かい合い座る父親とルチアの姿を目にして、荒っぽく息を吐いた。
気配を察し、こちら側に背を向けていたルチアが振り返り華やかに笑う。
何の絵ヅラだよ、これ。
「おう。帰ったか哉汰。こっち来て座れ」
「…」
難しい表情の父に促され、哉汰は一瞬だけルチアを当惑の目で見つめてから、ゆっくりと彼女の隣に腰を下ろした。
「Buona sera♪カナタ」
場の空気などまるで読まず、明るく声を掛けてくるルチアを無視し、
「どういうことだよ。これ」
と哉汰は父に尋ねた。