わかれあげまん



悠然とソファに凭れたまま哉汰の父・藤宮静司は目前の2人を見比べ、静かに口を割った。



「さてと。…そうだな。どこから話そうか。」



静司は面白そうに片側の口角を持ち上げた。



「お前も芸大生の端くれなら聞いたことがあるだろう。“エテルナ”って事務所の名を。」



哉汰はもちろんその名を知っていた。


そして同時に、更に訝しく眉を顰める。


「エテルナ…?」


エテルナはイタリアで随一ともいわれる規模を誇る建築設計事務所だ。



創設者はフランコ・ビアンキという著名な建築家で、名だたる国際建築雑誌には毎回のようにこの事務所の特集が組まれ、哉汰の学校の建築学科の生徒たちも、一度は実際に足を運んでみたい、研修を体験したいと憧憬を抱くような、そういう建築事務所だった。




「…ミラノにあるフランコ・ビアンキの事務所だろ?それが何だよ。」


憮然と尋ねた哉汰に、ルチアが驚くべきことを口にした。


「カナタ。…フランコはルゥのパパなの。」



「…!?」









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