わかれあげまん
早足に庭先をガレージへと回ると、玄関側から外へ出ていたのか、ルチアが哉汰のバンの前で佇み、しくしくと泣いていた。
「カナタ…おこんないでぇ」
絞り出すような声で言ってまたさめざめと泣き崩れるルチアを、哉汰は少し離れた場所から温度を失った瞳で見つめた。
「・・・」
「ね。…お願い。ルゥの下宿まで、乗せて帰って。」
「…」
苦々しい息をついてから、哉汰は眉間に皺を寄せた顔を横へ逸らし。
リモコンキーを作動させた。
ピピッという電子音とともに、ロック解除される銀のバンを顎で示して。
「…乗れ。…着くまで、俺に喋りかけんな。」
「カナタ…」
冷たく言い放った哉汰に失望するように項垂れ、しゃくりあげながらルチアはゆっくりと助手席に乗り込んだ。