わかれあげまん
そしてブルリと身震いして身をすくめ。
「うーっ、冷え込んできたな。じゃ、柚ちゃんはこれから電車で帰るんだよな。」
「あはは…ですね。」
「送ってあげようか?」
「えっ?…」
「僕今日はこれから、逢森方面に行く用があるから」
穏やかに言いながら、高戸所長は哉汰カーの駐車していたとなりのスペースにある自分の愛車を顎で示した。
逢森方面とは、柚と哉汰の大学のある土地をさす。
「こ、こんな時間からですか?」
所長は嬉しそうにニコリと笑い、
「大学時代の仲間と飲みに行くんだ。」
「飲みにっ…て、…車でですか!?」
「帰りは代行呼ぶから平気~。」
子供の様な笑顔でおどける所長に、柚は思わずクスリと笑みを漏らした。
「それじゃ、…お願いしちゃおうかな。」
「よしよし。じゃ、研究所閉めて来るからさ。乗ってて?」
そう言って満足げに柚の頭をなでてから、所長はポケットのリモコンキーで愛車を開錠し、促した。