わかれあげまん
「…あの、…所長。」
国道を数分ほど走ったあたりで、柚が口を開いた。
「ん?どした?」
「…」
手にしたままの哉汰のメモリスティックを弄びながら、柚はぽつんと呟くように言った。
「藤宮くんて…なんで研究所(ここ)にバイトなんて、来たんでしょうね。」
一瞬、んん?と怪訝そうに柚の方を伺った高戸だったが。
「言われてみれば、…それもそうだよなあ。彼ならお父さんがあんなスゲー人だから、バイトなんてしなくてもいくらでも仕送りとかもらえそうなもんだし…」
「…。」
「…となると。社会勉強か、それとも道楽かな?」
そう言って所長はニタリと笑い、柚にウインクをよこした。
道楽って。…
藤宮くんはそんな軽い気持ちでこのバイトを始めたんじゃないと思うけどな。
柚は少しむっとして、答えた。