わかれあげまん



「いつもあんな明るくて天真爛漫な星崎ちゃんが!?マジで?…すごい意外。」



言いながら複雑そうに眉をひそめる所長に生ぬるく笑うしかできない柚だったが。


やがて真顔になって。



「あ、こんな話したの、藤宮くんには内緒にしてください!…」



と念を押した。



「え?ああ、わ、分かった。もちろんだよ。」



所長の答えに、柚はホッと息をつくと、再び掌の上のUSBメモリをそっと撫でた。



「……根拠のない、あたしのただの思い込みかもしれませんし…」



「そんなことはないんじゃない?」



「え?」


驚いて見上げた所長の顔は、上司らしい落ち着いた微笑をたたえていた。


「星崎ちゃんは本当に彼の事を気にかけてるみたいだから。…きっと的外れではないよ。」



そう言ってまた微笑んだ所長の顔は、少しだけ悪戯気を含んでいて、柚は困ったように赤らめた顔を背けた。



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