わかれあげまん
晩秋の山頂の、突き刺すような冷え込みの中に、哉汰は項垂れたまま佇んでいた。
どれ位その闇の中に身を晒し続けていただろうか。
虫の音に混じり、微かに車のエンジンの排気音がしたような気がして、哉汰は久方ぶりにゆっくりと目を開けた。
そして訝しく目を細め、その音に注意を払った。
気のせい程度だった微かなその音は、確実に山道を蛇行しながら這い登ってくる。
いや。
こんな人気のない山に、
しかもこんな時間に登ってくるイカレた奴はせいぜい俺くらいだ。
しかし、遂にはっきりそうだとわかる車のエンジン音に変わったそれは、まっしぐらに哉汰のいるこの山の沿道を目指し、いまやかなりのスピードで近づいてきた。
目も眩むようなハイビームのヘッドライトを引き連れて。