わかれあげまん
「怖いのか?…俺の事。」
え、っと眉を曲げた柚の顔が、瞬時に赤みを増す。
「なかった事にしたい程、怖い思いをさせたのか?…」
「ち、違っ…」
慌てて頭を振りそれを否定する柚を見る哉汰の瞳が苦しげに歪んで。
やがて何かに失望したように力なく目を閉じ、項垂れた。
「…本当に、…悪かった」
俯いたままやがて、哉汰は掠れた声でそう詫びた。
それからそっと柚の手首を離し、ゆらりと立ち上がると、無言のまま扉に向け歩き出した。
柚は困惑のまま呆然と、靴紐を締めている哉汰の背中を見ていたが、我に帰り慌てて立ち上がってそこに走り寄った。
「ま、待って、藤宮く、…っ!?」
靴を履き終えやにわに振り返った哉汰が、そこに立っていた柚を掻き抱いた。
びくんと一度跳ねた小さい身体が、ぎゅっと熱い胸板に押し付けられる。
早鐘を打ち鳴らすみたいな鼓動は最早誤魔化しようがない。