わかれあげまん
抱き竦められたまま耳稜に寄せられた唇が囁くように告げた。
「なかった事になんて、俺はできない。」
驚き息を飲む柚に構わず、哉汰はなおも言った。
「なかった事になんて、したくない。」
「あ……!!」
更に絞るような囁き声と一緒に、哉汰の唇が柚の耳に甘く押し当てられ、柚はまたピクリと身体を揺らした。
ね、…
それって、…
どういう、意味?
尋ねようとして開いたはずの唇は、弱く浅い呼吸を繰り返すだけで精一杯。
情けなくてまた、切なく表情を歪めた柚を、哉汰はそっと解放し。
振り向く事なく扉を開け、出て行った。