わかれあげまん



怯えたように目を見開いたまま、はらはらと落涙する柚。


そのまま何かに耐えるように息を吐いてから。


「ごめん、美也子…言えない。」


美也子の眉がまたわずかに寄せられた。


「言えない…って、…。」



バカね、柚。


『言えない』なんて。


しちゃったって言ってるようなもんじゃないの。



心の中でそう苦笑し美也子は答えた。


「…そっか。分かった。うん。余計な詮索だった。あたしこそごめん。」


それからジャンパーからポケットティッシュを取り出しそっと柚に手渡してやった。


「大丈夫。あんたを責めたりはしないわよ。」


ただやっぱりどうしても、引っ掛かる。


ここにきてのルチアのあの変化。


渡良瀬だって簡単には諦めないだろうし。





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