わかれあげまん
VDのスタッフルームに向かいながら、哉汰は顔を曇らせた。
こんな稚拙で安っぽい手を使ってまで、あの人に執着するのか…
ヤバいな。マジで。
あの渡良瀬という男、相当イカれてやがる。
やがて哉汰は下方に視線を置きながら、ふと歩みを止めた。
昨夜抱きしめた小さな肩の感触が、まだ掌に残っている。
「…」
掌を見つめながら唇を噛んだ。
今一番サイテーなのは、俺自身だ。
ルチアの事と親父の事で弱り果てたまま、甘えるような真似をしてしまった。
だから「何もなかった」なんて言わせてしまったんだ。
ひどく傷つけてしまったんだろう。
でもこのままじゃ終われない。