わかれあげまん
「おやおや~?珍しい人がいるなあ。」
間の抜けた声が前方から投げられ、哉汰ははっと前を見た。
スタッフルームからちょうど出てきた渡良瀬がこっちを見たまま挑戦的に口角を持ち上げた。
憤懣の眼差しを静かに宿しながら、哉汰はつかつかと渡良瀬に歩み寄った。
そして目の前に立つとポケットからフラッシュメモリを取り出し呈しながら言った。
「進級制作のプランニング。…二週間前に送信したはずだけど、どういうわけか届いてないと聞いて。」
哉汰のその台詞をある程度予測していたらしく、渡良瀬はわざとらしく、
「ああ、…それね~。」
とだるそうに答えた。
「残念だけど藤宮くん。提出期限はとっくに過ぎてるんだ。俺は君に評価をあげることができないよ。すなわち、教授陣の前での合評会には、君は参加できないってことになるねえ。」
ふつり、と怒りのボルテージが心の中で湧いてきたが、哉汰は堪えながらまた静かに言った。