わかれあげまん
突き抜けるような怒りが背筋をぞっと駆け上がった。
その勢いのまま長身の渡良瀬ににじり寄り、襟を掴んだ哉汰は掠れた低音の声で囁いた。
「…彼女になにかしてみろ。次は口切る程度じゃ済まさない。」
「あれ?生徒の分際で俺を脅すのか?忌々しき問題児だなあお前。」
掴んだ襟を力任せに絞ったせいで、渡良瀬が苦しげにむせた。
「俺は退学なんて怖くない。彼女を守るためなら、今はあんたを殺せる。」
「う…っ離せよっ」
どうにか哉汰を突き飛ばした渡良瀬は、青白い憎悪の表情で彼を睨んだ。
「ほざけ。…俺が柚と寝た時点でな、もう勝負は決まってんだよ!」
捨て台詞とともに踵を返し、渡良瀬は少し逃げるような足取りでスタッフルームに戻っていく。