わかれあげまん
表情をこわばらせ、黙ってつかつかと部屋に入り柚に近寄る。
「えっ……、…あ///」
周りの目など気にも留めず、哉汰はいきなり柚の細い腕をとり再び教室を後にした。
引きずられるような勢いで部屋を飛び出した柚は、戸惑いを隠せないまま哉汰を呼んだ。
「ふ、藤宮くん!?」
「……」
「いきなりどうしたの!?」
無言のまま階段を駆け下り向かった先は駐車場で。
見慣れた銀のバンに彼女を押し込むようにした哉汰は、助手席から少し怯えたようにこっちを見上げる柚を見てようやく一瞬だけ、動きを止めた。
「…な、なに…?どこか行くの?」
わけがわからず恐る恐るまた尋ねた柚に。
「俺の部屋。…」
毅然と答えた哉汰に、柚は目を見開いた。
そして次に紡がれた彼の短い一言に、柚は愕然となった。
「あんたを拉致する。」