わかれあげまん
柚 の 決 意



哉汰の腕に包まれ、その胸に額を押し当てたまま、柚は切なさに小さく溜息を落とした。



藤宮くんの真っ直ぐな想いを知って、泣きたい位嬉しいのに。


同じだけ、


心が痛い。



なぜならあたしは、


「わかれあげまん」。


このまま藤宮くんと幸せになんて、なれるはずがないんだ。



甘えるようにその頬をカットソーに擦りよせた柚を、哉汰は一層優しく包みこむように腕をまとわせた。


ほのかな煙草の匂いと、哉汰らしい甘く涼やかなコロンの香り。


このまま、ずっとそばにいたい。


離れたくないよ。…


「あー。…やっぱダメだ。」


柚の耳に寄せられた唇から、やるせない掠れ声がした。


「帰したくない。」


「!」


恥じらいと困惑がない交ぜの表情で柚が見上げると、哉汰は苦笑いに嘆願を込め言った。


「何もしないから、…ここに居てくれ。」
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