わかれあげまん



「藤宮くん。…教えて?何を言われたの?」



抱きしめる腕がぎゅうとまた絞られ、柚の身体はすっぽりと哉汰の身体に収まった。



「駄目だ。…話したらあんた、何をしでかすか分からないから…」




それって、どういう意味だろう。



藤宮くんと渡良瀬先輩との間に何があったかを知ったら、



あたしがどうかなっちゃうって…こと?




「もう、考えんな。」



「ひにゃっ!?」


駄々っ子のようにムスッとした声で言った哉汰が柚を抱きしめたまま仰向けに倒れた。



慌てふためく柚の上にくるりと寝返る。



「約束だけは忘れるなよ。」



「え?」



「渡良瀬と何かあったらすぐに俺を呼ぶって。」



こくりと慌てて頷いた柚に安堵したように哉汰は笑み崩れ、彼女の襟元にそっと顔をうずめた。



溜息とともに吹きかけられた息が想像以上に熱く、柚の身体がピクリと反応した。


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