わかれあげまん
「おはよう、お姫様。」
「!」
すぐ脇で聞こえた甘い声に柚は慌てて起き上がろうとしたが。
「っ…」
両腕と足が、動かない。
手首をグイと手前に寄せようとした時、ピンと紐のようなもので強く引っ張られる感覚が走った。
それで柚は自分がベッドの上で仰向けに縛り付けられているのだとすぐに悟った。
「うーん、いいねぇ。背徳的でそそるなあ。」
「や!はっ…外してっ!どうしてこんな…」
「ダーメ。だってさ。解いたら逃げちゃうんだろ?…あいつのとこに」
言葉尻に憎悪を込めるように低く言った渡良瀬を、柚はきっと見返した。
「昨夜も泊まってたんだろ?あいつんとこに。あ?」
脅しつけるようにぎゅっと顎を掴まれても、柚は怯むことなく渡良瀬を睨み続けた。