わかれあげまん



「何も聞いてないの?あいつから。」


驚いたように目を丸くすると、渡良瀬は勝ち誇ったようなあの鋭い瞳で柚を見て口端を持ち上げ言った。


「俺さあ。柚と寝てからトントン拍子に出世が運んで、この秋から教員研修生って立場になれたんだ。わかる?」


「・・・!」


「そう。つまりかの有名な藤宮哉汰くんは今や、俺の“教え子”ってわけ。でもって、ほぼ落第も決定しちゃった、VD1番の劣等生。」


え・・・


え!?


愕然と自分を見てくる柚が面白いのか、渡良瀬はけたけたと笑いながら続けた。


「だって仕方ないじゃん。…柚は俺が先に目を付けたのにあいつ、横から掻っ攫うような真似するから。そんな鬱陶しい奴に単位なんてやれるかよ。」



「ひどい…ひどいよ!!そんなの職権乱用っ…」


「なんとでも言えよ。言っとくけど訴えても無駄だぞ?証拠はどこにもないしな。…それにもとはと言えば、柚が俺を怒らせたのがいけないんだから。」



柚は眉を寄せたまま悔しさに唇を噛み締めた。



あたしの。…あたしのせいだ。


あたしがセンパイを怒らせたせいで、藤宮くんが…落第させられちゃう。



そんな大変なことになってるのに、藤宮くん、あたしには何も・・・



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