わかれあげまん


「自分の立場、分かってきた?…キミの出方次第では、あいつを退学にしてやってもいいんだぜ?」


先輩の卑怯者。


声にならないその叫びを涙を溜めた瞳に込め、柚は渡良瀬をギュッと睨んだ。


「…俺の言うこと、聞く気になってきただろ?ん?」


睨み据えていた涙目はやがて、徐々に力を失い、う、うっ、と小さい嗚咽を漏らす柚。


「可哀想に、絶望感に苛まれちゃって。大丈夫だよ。あいつなんて忘れてこの先ずっと俺の隣に居るって約束してくれれば、俺はあいつを追い出したりはしない…」


猫撫で声で言いながら、渡良瀬は柚の髪に優しく指を通し、それを襟のボタンへと向かわせた。



あたしは、なんて情けない人間なんだろう。


先輩の本性も、…

好きな人が抱えてる重い事実も、…

大切なこと、全部見落として、…

身勝手にもがいた挙句の果て、周りの人に護られて、助けられてばかり。


いやだ。

…藤宮くんがあたしのせいでまた、…。


そんなの、いやだ!






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