わかれあげまん
「…りに、す…から、…」
「ん?何だって?」
柚の発した声があまりにか細かったため、渡良瀬はもう一度と促す。
「先輩の、言う通りにします、…だからお願い、…藤宮くんを留年させるなんて、もうやめて。彼には二度と、手出ししないで」
嗚咽混じりに言った柚を、渡良瀬は満足げに見下ろし、またニヤリとしてから。
「キミもだよ?もう二度と藤宮には近寄らないって約束できる?」
涙に咽びながらもまっすぐに渡良瀬を見つめ、そして柚は凛とした声で答えた。
「…約束します」
一層勝ち誇るかのように目を細めわらった渡良瀬は突然視線を戸口の方へ向け、そして言った。
「……だってさ。聞こえた?」