わかれあげまん
明らかに誰かに語りかける風な渡良瀬に、柚はドキッとして慌ててその視線を辿った。
戸口の方へと頭を巡らし、そして息を飲んだ。
「…ル、…ルチアちゃ…」
そこに佇んでいたのは紛れもなく、あのルチアだった。
頬を赤くし、じっとりとした視線で柚を睨みつけていた。
混乱と焦燥に柚の心臓は踊り狂うように拍動し始める。
どうして、ルチアちゃんがここに…!?
「…驚いた?俺が呼んだんだ。」
渡良瀬はそんな柚をリアクションを見通していたとばかりにククッと喉を鳴らし笑った。
そしてゆっくりと柚のブラウスのボタンを外しにかかる。
「念の為、保険をかけておこうと思ってね・・・」
保険!?
「俺の元から二度と逃げ出したりしないように。」
先輩、何を、言ってるの…?
そう混乱のままに考えるうち、全てのボタンを外し終えた渡良瀬がまたルチアに言った。
「準備はいいよ、ルチアちゃん。カメラはとりあえずそこだけど、キミの好きなように撮っていいから。」
さらりと言ってのけた渡良瀬のその言葉に柚はまた衝撃を受け、そして悟った。
ルチアちゃんを遣ってあたしを撮影する気なんだ。
「でも、できれば官能的に仕上げて欲しいなあ。俺と柚のラブシーンなんだから。」
そう楽しそうに笑った渡良瀬自らも遂に自分のシャツを脱ぎ払った。