わかれあげまん



「ル…チアちゃん…」


ゆっくりとカメラの前に立ったルチアに、柚は悲しげに呼びかけた。


「センパイがいけないんだよ。ルゥとカナタの邪魔したから。…」


朗らかだったルチアは別人のように感情のない声で言った。


「センパイは、ルゥからカナタを盗んだ。ドロボウは…許さない。」


絶望に浸された柚の胸の奥から仄かな怒りが沸き起こってくる。


「どうしてそうまでして藤宮くんに執着するの?…ずっと、裏切ってきたんでしょう!?」


カメラに置かれたルチアの指がピクリと跳ねた。


「藤宮くんは、傷ついてた。」


悔しいよ。…藤宮くん。


「すごく傷ついたんだよ!?」


「ウルサイ!」


ルチアはヒステリックに叫び、早口に「ワタラセ、早く!」と命じるように言った。


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