わかれあげまん
迷うことなく近づいたその足音が、渡良瀬の部屋のドアの前でぴたりとやんだ。
ガチャガチャ、と無遠慮にドアノブが動いた後、少しの間を置き。
ルチアがカメラを下方へおろし呆然と、そこから見通せる玄関の方へ視線を投げた。
カチャリ。
外側から鍵が外されそして。
何のはばかりもためらいもなく開かれたドア。
柚と渡良瀬のいるベッドからは、玄関の様子はうかがいしれない。
が、そこに訪問者がいるいうことだけは理解できた。
「あ」
とルチアがおびえたように声を漏らし、そして次の瞬間。
「ちょっと!…誰?あなた。」
ドアの方からいかにも不愉快そうに、甲高い女性の声がした。
その声に飛び上るほど動揺した渡良瀬はベッドの上で柚に覆いかぶさっていた身を起こした。