わかれあげまん


「とにかくこのままじゃ済まないから。…よくも私を侮辱してくれたわね、和史!」


「優香!」


激昂がおさまらないまま、優香はつかつかとベッドへ歩み寄るとそばにあった鋏で柚の四肢を拘束していた結束バンドを切って回りながら。


「全部話してやるわ。あんたのパパとママにも。あんたの大学にもよ!」



「もうダメだ…終わった…終わりだ俺……」

渡良瀬は泣きそうな声で呻き、ボスンと力なくベッドに座り込むと頭を抱えた。


優香というこの美女が彼にとってどれほどの脅威的存在なのかは、その時の柚にも計り知れなかったが、何をおいても今柚にとっては。


絶体絶命の窮地に突如舞い降りてくれた天使に違いないと確信していた。


身体が完全に解放されると、柚は安堵から嗚咽がこみ上げた。


恐怖でまだ震えが止まらない。


それでも乱された服を元に戻し、手首に着いた結束帯の食い込んだ痕を手でさすりながら柚は静かにルチアを見た。


床にへたり込みシクシクと泣き出した彼女に優香は叫んだ。


「何よ。あんた留学生?…いくら外国人でも人間としてやっていい事と悪い事の区別位つくでしょ!?どうなの!?」


ルチアは駄々を捏ねるように頭を降りながら、母国語混じりに、知ラナイ、私何も知ラナイと喚いた。


「で、あんたは?」


今度はベッドで震えている柚に向き直り、優香はぶっきら棒に尋ねた。


「怯えてるわね。まさか同意の上なんてオチじゃないんでしょ?」













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