わかれあげまん
手の甲で涙を拭い顔を上げた柚に、
「何も言わないで、頼むから」
と最早いつもの横暴さもプライドさえも失い、必死に請う渡良瀬を憐れみの目でしばし見つめた後。
「あたしには理解できません…どうして?…恋人がいるのに…それもこんなに綺麗な人がいるのに、どうしてこんな事っ…」
「しゃべんなって!柚っ!」
「……ほんっと、最低。こんなやつこっちが願い下げ。この部屋も即刻引き払うし、こんな事してたって、大学に突き出してやるわ。あんたも警察に被害届でも何でも出せばいい。あたしは止めないわよ。好きにすれば?」
「優香あぁっ!!」
恋人の辛辣な言葉に耐えきれなくなりその場に泣き崩れた無様な渡良瀬を、柚は整然と見つめていた。
「被害届は出しません。…」
そう凛とした声で返した柚を、渡良瀬は涙ぐんだ顔をハッともたげ見た。
「ちょっと、あんた。」
優香は猜疑の目で睨みつけた。
「そんな目に遭ってんのに、こんな男のこと庇うの!?やっぱあんた浮気相手なんじゃないの!?」
「違います!ただ…」
あたしは。━━━━
今のあたしが望むことは、ただ一つ。