わかれあげまん






* * *



美也子の耳にその事件が知らされたのは、わずか二日後の週末の事だった。



土曜で大学の講義はすべて休講だったにもかかわらず、その噂は瞬く間にキャンパスに広まっていた。



VDゼミ指導助手の渡良瀬と、陶芸科のイタリア人留学生ルチアが起こした不祥事。



“同じ学部内の女子学生に暴行恐喝未遂、淫らな映像を撮影しようとしたらしい”



学生同士でささやかれたその事件の概要を知った直後、美也子はすぐさま柚の携帯に電話をかけた。



ターゲットは間違いなく柚だったにちがいない。



美也子は胸が張り裂けそうなほどに心配し、携帯をかけ続けたが繋がらず、学内のどこを探しても柚の姿を見つけることができなかった。



「ああ、もう!一体なにがどうなってるの!?」


藁にも縋る想いで柚の所属する油画制作室を訪ねたが、彼女の制作台の周りはきれいに片づけられもぬけの殻だった。




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