わかれあげまん
「ねえ。ほんっとに柚の行方知らないの?」
美也子は同じ油画仲間にそう尋ねたが。
「…さあ。今朝ここに来たら、すでに柚の机の周りが綺麗に片付いちゃってて、教授からも何もきいてないし…。っていうかさ、美也子。」
柚の友人が半泣きのような顔で美也子のシャツの裾を引っ張る。
「渡良瀬さんとルチアに暴行未遂って…されたのってやっぱ、柚なの!?」
「…っ」
美也子は険しく眉を寄せると、何も答えず部屋を飛び出した。
早足に歩きながら忙しく携帯のアドレスをスクロールする。
「どうしようどうしようどうしよう。…藤宮クンも学内にいないし、電話番号なんて知らないし…」
…もう大学側に直談判に行くしかないのだろうか。
だけどきっと、無関係な人間に真相なんて教えてくれないだろう。
考えながら歩くうち、美也子ははたと気づいた。
「そうだ…バイト!…柚と藤宮クンは同じ研究所でバイトしてるんだ!」
しかも今日は土曜日。
土曜は朝から研究所で、児童画の仕事があるって言ってた!