わかれあげまん

茶色の髪をなびかせ、眉間にほんの少し険しさを見せながら。



白い息を吐きつつ近づくその人は。



たった今まで焦がれ焦がれて、悲痛に名を呼び泣いていた…


「ふ、じみや、く…!?」


掠れた小声で呼び終わる前に、哉汰の腕が柚のそれを捉え引っ張り上げると、あっという間にその腕の中に引き入れ抱きしめていた。


「!!」


あたたかい体温と、優しい胸板の弾力。


切ないほどに懐かしい匂い、息遣い。


全てが一瞬にして柚の身体に一気に流れ込んだ。





「バカ柚。」


「あ…」


優しく自分を窘める声に、忘れていた涙が容易く呼び戻され。


再び込みあがる嗚咽が柚の喉を震わせた。



「藤宮…く…うぅ!」


哉他のシャツが柚の涙に濡れてジワリと熱を持ち、哉汰は抱きしめる腕に力を込めた。


彼女の細い襟首に鼻をうずめ。


「…ばか」


再び哉汰が優しく言った。





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