わかれあげまん
焦りに頬を染め小刻みに首を振ると、
「無理」
と柚は小さく答えた。
「何で」
「何でって…だって、分かるでしょ?もう大学には戻りたくないの」
震える声で答え、くるり背を向け俯いた柚の小さな肩に、哉汰の掌がそっと乗せられる。
「渡良瀬に酷い目にあわされたのが辛いのか?噂の渦中には戻りたくないからか?」
柚は俯いて黙ったまま体を震わせていた。
その小さな後姿を優麗な目で見つめ、哉汰はフッと溜息交じりの笑みをこぼした。
「違うよな。…あんたはそんな事で逃げ出すような人じゃない。」
「!」
「戻らない理由を知ってる。」
ビクッと肩を揺らした柚が、ゆっくりと背後を振り仰いだ。
怯えるような切ない瞳で見上げた先、精悍な哉汰の黒い瞳に射抜かれ、柚の心臓はどきんとまた大きく跳ねた。