わかれあげまん
* * *
峠のただなかに建てられたファッションホテルは、少し古びてはいたけれど。
静かな冬の夜明けにふさわしく、ひそやかで控えめな佇まいだった。
もうだれにも邪魔だてさせない。
ベッドの上で静かにそう囁いた哉汰は。
自分の下に組み敷いた華奢な白い身体に、優しくいたわるように唇を滑らせた。
「あ…」
身体中を駆け巡る目くるめく感覚に耐えきれず瞼を閉じようとする柚に。
「…ダメだ。ちゃんと、……見てて。柚」
哉汰は色っぽく息を乱しながらそう請う。
苦しげに絞った瞼の隙間から艶っぽく潤んだ瞳を震わせ、どうにかというように柚が哉汰を見ると。
「いい子。」
いたずらっぽく口角を引き上げ、両手で柚の腰を支え、繋がった体をゆっくり律動させた。
穿たれた身体が湿った音を立て、柚は甘い悲鳴を上げる。
「やアッ…」
のけぞらせた喉に唇を寄せ、チュッと音を立て吸い上げてまた。
「こら。こっち見て。…」
いやというほど知らしめたい。
手放すつもりなんて、一ミリもないってこと。
「全部見てて。…俺のすること、…最後まで」