わかれあげまん
「やっぱあたし一人じゃ手が回らなくて……きよえちゃんの代わりのスタッフ誰か、居ませんか?」
と眉間に皺を寄せて高戸に懇願する柚。
きよえちゃん、というのはふた月前まで柚とペアを組んでこの子供絵画教室を担当していた29歳の先輩講師だった。
既婚者で妊娠していたきよえちゃんは遂に臨月を迎え、先月で仕事を辞めていた。
「うん。実はさ。今から一人、新スタッフの面接来るんだよね」
高戸がニコニコして答え、柚は目を輝かせ、ホントですか!?といきまいた。
「ホントは受験指導コースのスタッフで募集したんだけどさ。星崎ちゃん大変そうだから、子供教室の方も助手頼めるか、掛け合ってみるよ。」
「やった!ありがとございます、所長!」
天の助け~!と言わんばかりに柚はキラキラ瞳を潤わせて高戸の手を取って握手した。