わかれあげまん



「うわー。もしやすごい男を雇っちゃったのかなー。僕」



興奮冷めやらぬ様子で無遠慮に視線を向ける所長を見てから、柚が哉汰のほうへ視線を移すと。


彼の浮かべるその冷ややかな表情に、一瞬息を飲んだ。


「別に。すごいのは親父ですから」


穏やかな口調なのだけれど、明らかに反骨心の込められた言葉だった。


しかしそれに気付かないのか所長は更に続ける。


「じゃ藤宮クン、君は将来やっぱお父さんの事務所継ぐつもりなんでしょう?」



「……」


所長からつと目を逸らした哉汰から苛立つような溜息が落とされ、言いようのない張り詰めた空気を感じ取り、柚はたじろいだ。



「いいよなー。すごいよな~。いやー、是非一度お父さんと」



哉汰自身の事を差し置き、まだ父親の話を続けようとする所長がそう言い掛けた時。



「あっぢぃぃぃ!!!!」



およそ女の子とは思えない豪快な悲鳴が上がり、所長と哉汰はハッと柚の方を見た。


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