わかれあげまん
彼らがそっちを振り向いたのと同時、ガシャーンと派手な音を立てやかんがガスコンロ上を転がって、辺りに零れた熱湯がシューと音を立てた。
「うあっ!?」
もやのように立ち込める白い蒸気の中で、柚は誰かが矢の様に早く腕をつかんで引っぱったのを感じ、呻いた。
その場所に冷水が当たり、癒えていく痛み。
「……え」
「何してんだよ……あんた」
流しの水のコックを捻って、柚の火傷した左手を流水にさらしながら呆れ顔でこっちを見てるのは、哉汰だった。
へ、
といまいち状況をつかめていない柚が目を瞬いて哉汰を見上げていると。
「だっ、大丈夫かい?星崎ちゃん!?一体どうしたの!?」
出遅れた所長は慌てたように立ち上がって、コンロ上に転がったやかんを立て直しながら言った。