わかれあげまん
「パシリにする気?イヤよそんなの」
当然といえば当然だ。
「そこを何とかお願い!ね?美也子~」
掌を合わせ、テーブルに額をこすりつける柚にも美也子は冷たく言い放つ。
「や・だ!第一あたし、藤宮くんの名前は知ってるけど全く面識ないし。変なやつって思われるじゃん」
「みやこー!」
「そんくらい自分でやんなさい!」
だめかあ、と柚は青白い顔を上げ、ガクリと肩を落とした。
「つか何をそんな渋ってんのよ。片思いしてる女子中学生じゃあるまいし」
だって。と柚は低く呟いて躊躇う理由を白状した。
「よりによって藤宮くんVDなんだもん。VD棟には渡良瀬先輩居るし……ばったり会っちゃいそうで恐いんだもん」
ああ、なるほど。
恐いのはそっちね、と美也子はようやく少し柚の懸念を理解したのか、綺麗な眉を持ち上げて溜息をついた。
「まあねえ~。あんたが先輩と気まずいってのはあたしのせいでもあるけど」
えっ!
じゃあ行ってくれる?
と期待感いっぱいに見たが、美也子はすぐにべしっと柚の額を掌で叩いて。
「やっぱ自分で行きな。渡良瀬先輩のことはあんたが引けを感じる必要なんて何にもないのよ?それにどーせまたサークルでは顔つき合わせなきゃなんないんだし」
「う」
「サッと行ってサッと帰れば会わないかもしんないじゃん!ホラ!いっといで!」
美也子が力強く言い、仕方なく柚はのろのろとソファから立ち上がり、紙袋をつかむと。
「じゃ…………行って来る」
と死にかけたような顔で歩き出した。